女性と顔を合わせたのは初めて。だけど私は、肖像画や硬貨の彫刻で女性を見知っていた。
なにより、女性とよく似た色彩を持つ少年のことを知っている――。
「あなたは、皇た……っ!」
女性は唇にトンッと人差し指をあてがう仕草で、私の続く言葉を遮った。
ユリアに聞かされた内容や状況から見れば、目の前の女性が一連の出来事の黒幕に間違いない。とはいえ、どうして彼女がこんな行動に出たのか、分からないことだらけだった。
「あなたに内密のお願いがあってこうして来てもらったの。私のお願いを聞いてくれたら、手荒なことはしないって約束するわ」
女性は……皇太后様は、あえて名乗ることをしなかった。彼女は私が半身を起こす寝台の隣にトンッと腰を下ろして目線の高さを合わせると、額に落ちてきた髪をサラリと耳に掛けながら切り出した。
「あなたに最初に伝えておくわ。私がただひとつ願うのは、愛しい我が子の安寧の治世だけよ」
なにより、女性とよく似た色彩を持つ少年のことを知っている――。
「あなたは、皇た……っ!」
女性は唇にトンッと人差し指をあてがう仕草で、私の続く言葉を遮った。
ユリアに聞かされた内容や状況から見れば、目の前の女性が一連の出来事の黒幕に間違いない。とはいえ、どうして彼女がこんな行動に出たのか、分からないことだらけだった。
「あなたに内密のお願いがあってこうして来てもらったの。私のお願いを聞いてくれたら、手荒なことはしないって約束するわ」
女性は……皇太后様は、あえて名乗ることをしなかった。彼女は私が半身を起こす寝台の隣にトンッと腰を下ろして目線の高さを合わせると、額に落ちてきた髪をサラリと耳に掛けながら切り出した。
「あなたに最初に伝えておくわ。私がただひとつ願うのは、愛しい我が子の安寧の治世だけよ」



