ユリアが書き上がった手紙を携えて出て行ってしばらく経ったところで、扉の外に気配を感じた。確証などどこにもないが、なんとなく扉の外にいるのは皇太后様本人ではないか、そんな勘が働いた。
ユリアは私の目覚めを報告していないはず。狸寝入りをすることも考えたが、実際に話をしてみたい思いが勝った。
結局、私は寝台に半身を伏し、今まさに目覚めたふうを装った。
――ギィイイ。
開錠の音の後、扉が開かれた。
入室者の足音が一歩、また一歩と近くなり、無意識に息を詰めた。
「あら。寝坊助さんがやっと起きたようね」
……これは、間違いない! 声を受けて恐々と視線を向けると、年の頃は四十代半ば。豊かな栗色の髪から薄い虎耳を生やし、唇に真っ赤な紅を引いた女性が、艶とボリュームに乏しい細い尻尾を揺らしながら私を見下ろしていた。
顔の造作は整っているし、エメラルドのような色をした瞳も美しいが、蛇みたいに狡猾な眼差しを向けてくるその人に、好感はこれっぽっちも抱けなかった。
ユリアは私の目覚めを報告していないはず。狸寝入りをすることも考えたが、実際に話をしてみたい思いが勝った。
結局、私は寝台に半身を伏し、今まさに目覚めたふうを装った。
――ギィイイ。
開錠の音の後、扉が開かれた。
入室者の足音が一歩、また一歩と近くなり、無意識に息を詰めた。
「あら。寝坊助さんがやっと起きたようね」
……これは、間違いない! 声を受けて恐々と視線を向けると、年の頃は四十代半ば。豊かな栗色の髪から薄い虎耳を生やし、唇に真っ赤な紅を引いた女性が、艶とボリュームに乏しい細い尻尾を揺らしながら私を見下ろしていた。
顔の造作は整っているし、エメラルドのような色をした瞳も美しいが、蛇みたいに狡猾な眼差しを向けてくるその人に、好感はこれっぽっちも抱けなかった。



