獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「どうしたユリア?」
「私の尻尾を撫でていただけませんか? はじめてお会いした日に『次回』とお約束したまま、まだ撫でていただけておりませんでしたから」
 はにかんだ笑みを浮かべ、フリフリと尻尾を揺らしてみせるユリアが物凄く可愛くて、思わず抱き締めたい衝動に駆られた。
「もちろん! 僕だって君の尻尾をずっと撫でたいって思ってたんだ」
 さすがに抱き締めるのは自粛して、代わりにそっと彼女の尻尾に手をやると、毛流れに沿って丁寧に撫で上げた。
「やっぱりユリアの尻尾はフワフワで可愛いな。また今度ハーブスプレーを使って、ゆっくりマッサージをさせておくれ」
 やわらかさを味わうように幾度か手指を往復させてからゆっくりと解放すれば、尻尾は嬉しそうにフリフリと左右に揺れた。
「はい。夢心地だとうわさで聞いておりますわ。『また今度』を楽しみにしております」
 そう言ってユリアは嬉しそうに微笑んで部屋を後にした。