獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 それどころか、間違いなく私自身の状況もマクシミリアン様を悩ませる原因のひとつになってしまっている。
「ヴィヴィアン様は情けなくなんてありません! 私こそ、自分の無力を痛感しておりますわ……」
 唇を噛みしめて拳を握り締める私を、横からユリアが痛ましげに見つめていた。
「なにを言うんだ。皇太后様の目がある中、よく状況を教えてくれた。君には感謝しかない」
「ヴィヴィアン様」
「しかし、なんとか僕の現状だけでもマクシミリアン様に知らせることが出来ればいいんだが……」
 とはいえ、ここは皇都から遠く離れた離宮。どうやってマクシミリアン様に知らせたものか……。
 その時、私の鼻腔を目覚めに感じたのと同じ潮の香がふわりと掠める。
「そうか! 直接マクシミリアン様に連絡を取ろうとしなくとも、姉様に繋ぎを取れば……っと、すまん」
 ピンときて思わず声を大きくしてしまい、慌ててトーンを抑えた。
 潮の香から離宮の立地に思い至り、脳内では現状の打開策が弾き出されていく。
「どういうことですか?」