獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 少し頭痛が残っていたが、そんなことはどうでもよかった。それよりも今は、尋ねたいことが山ほどあった。
「順番に説明いたしますわ。まず――」
 ユリアはスッと表情を引き締めて少し早口に話し出す。そうして彼女から聞かされた現状は驚くべきものだった。
「なんだって、あれから三日が経っているだと!? しかも国立研究所で襲撃事件が発生し、交渉決裂のままガブリエル様が帰国の途に着いた!? マクシミリアン様とガブリエル様に怪我はないのか!」
「ご安心ください、おふたりにお怪我はございません。しかし、アンジュバーン王国の外交官のひとりが軽傷を負う事態となり、我が国の信用は失墜いたしました。国交正常化の交渉は頓挫し、ガブリエル陛下は帰国の途に着かれたのです」
「そうか! おふたりはご無事だったか! とはいえ、国立研究所の警備は蟻の子一匹通さぬほど強固だったはず。いったいどうしてそんな事態になった!?」
「あのヴィヴィアン様、あまり声を大きくしては皇太后様に気づかれてしまいます」