獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 私は肌触りのいい男物の寝間着を着せられて、知らない部屋の知らない寝台に寝かされていた。支えに突いた手のひらに感じるシーツの感触は極上の絹。さらに飴色に光るマホガニーの家具で統一された室内の様相を鑑みれば、ここが貴人の屋敷の一室だろうと想像がついた。
 その時、扉の外からガチャガチャという音がして、ビクンと体が跳ねた。
 誰かが鍵を開けているようだった。
 ――キィイイイ。
 じきに扉が引かれ、入室者の足音が私に迫る。
「ヴィヴィアン様、目覚めておられたのですね!」
 私が恐々と振り返るのと同時、鈴を鳴らしたような可愛らしい声が響く。
「えっ!? 君は……!!」
 なんと転がるように私に向かって駆けてくるのは、モコモコの虎耳と尻尾を揺らしたユリアだった。
「あぁ、よかった! 昨日ハミル殿下が目覚め、ヴィヴィアン様もじきだろうと思っていたのになかなかお目覚めにならず、とても心配しておりました! お加減の方はいかがですか」
「大丈夫だ。それより、ここはどこなんだ?」