『やめてください。僕のおかげだなんてとんでもない。これは全員で引き寄せた成功です。なにより突然湧いて現れた僕を受け入れてくださったこと、僕の方こそ感謝しきりなんですから』
 ドミニクさんが頭を下げようとするのを慌てて制す。
 すると彼は柔和な笑みを刻み、私を見つめた。
『ヴィヴィアン殿、無理を承知で言おう。我が劇団に来ないか? そうして私たちと、人々の心震わせる舞台を作ろう。君と我々でなら、それができる』
 ……かつては舞台が私の居場所であり、生きる場所だった。
 だけど、役者だった前世の私は人生を終えた。そして、今を生きる私の居場所は舞台とは別にある。
『ありがとうございます。お誘いをいただけたことは光栄です。ですが僕はマクシミリアン陛下の近習で、陛下のお側が自分の居場所と心得ています。舞台はとても魅力的な場所ではありますが、僕の居場所にはなり得ません』
『そうか。……残念だが、この答えが分かっていたさ』
 ドミニクさんはヒョイと肩を竦め、軽い調子で答えた。