せめて彼女が帰宮の足に困ることがないよう余剰の馬車を一台待機させ、研究所に向かう馬車に乗り込む。しかし、車内でガブリエルを待ちながらも、頭からは一向にヴィヴィアンのことが離れない。
 ……ヴィヴィアンよ、ひとり置いていってしまい本当にすまない。
 だが、片時も離れたくない思いは俺とて同じ……! 皇宮に帰ったらたっぷりと埋め合わせをする。空白の時間を埋めるくらい、とっくと可愛がってやる! だから、今だけしばし堪えてくれ――!
 脳内のヴィヴィアンに誠心誠意詫びを伝えれば、彼女はいつも通り柔らかな微笑みで頷いてくれた。
 健気なヴィヴィアンの姿に、一層愛しさが募った。
 ――ガタンッ。
 その時、馬車の扉が開きガブリエルが現れた。
「やっと来たか、すまんが少し予定が押しているぞ。次の視察先は、最先端の設備を誇る国立研究所だ。本来、外部公開は一切しないのだが、今回は特別に主席研究員から最新の研究を披露し――」