舞台上でロミエとジュリエッテはひしと抱き合い、見えそうで見えない絶妙な角度で口づけを交わす。
オーケストラの演奏にのって、ふたりは手に手を取ってヒラヒラと踊り出す。今日が初合わせとは思えないほどヴィヴィアンたちのペアダンスは息が合っていた。
幕が下り、劇場を後にする段になっても目に焼き付いたように華麗な演舞の残像と心に残る幸福な結末の余韻は消えなかった。
するとここで、隣のガブリエルから低い唸り声があがる。
聞き付けて目線を向ければ、何故かガブリエルは眉間にクッキリと皺を寄せ、口をへの字にして右に左に首を捻っていた。
「すごい顔をしているぞ。どうした?」
俺の声が届いていないようで、ガブリエルは難しい顔をしてぶつぶつと念仏を唱え続ける。
「……やはり俺の思い過ごしなのか? しかし、あの細腰、あの華奢な骨格、なによりあの匂い立つような色香……。そもそも、百戦錬磨のこの俺が女を嗅ぎ分けられないわけがないのだ。ならば、導き出される答えはひとつ……」
口内で囁かれるゴニョゴニョとくぐもったそれはまともな音を結ばない。
オーケストラの演奏にのって、ふたりは手に手を取ってヒラヒラと踊り出す。今日が初合わせとは思えないほどヴィヴィアンたちのペアダンスは息が合っていた。
幕が下り、劇場を後にする段になっても目に焼き付いたように華麗な演舞の残像と心に残る幸福な結末の余韻は消えなかった。
するとここで、隣のガブリエルから低い唸り声があがる。
聞き付けて目線を向ければ、何故かガブリエルは眉間にクッキリと皺を寄せ、口をへの字にして右に左に首を捻っていた。
「すごい顔をしているぞ。どうした?」
俺の声が届いていないようで、ガブリエルは難しい顔をしてぶつぶつと念仏を唱え続ける。
「……やはり俺の思い過ごしなのか? しかし、あの細腰、あの華奢な骨格、なによりあの匂い立つような色香……。そもそも、百戦錬磨のこの俺が女を嗅ぎ分けられないわけがないのだ。ならば、導き出される答えはひとつ……」
口内で囁かれるゴニョゴニョとくぐもったそれはまともな音を結ばない。



