獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 ヴィヴィアンと名乗った少年は真っ直ぐに俺を見つめて挨拶を述べ、流れるように腰を折って優美に礼を取る。彼の動きに伴って、月光を紡いだような艶めく金の髪が空気を孕んで揺れる。
 皇帝として多くの者と対峙してきた俺の目にも、目の前の少年は眩しいくらいに美しかった。その上、他の少年たちにはないある種独特な妖艶さを放っていた。元来の中世的な美貌も相まって、まるで俗世から切り離された精霊のよう。
 俺は美しすぎる少年を前にして、自分の選択が誤っていたことを悟った。同時に、ジェフリーの息子という事実に慢心して事前調査もそこそこに召し上げたことを後悔していた。
 一見すれば華やかな皇宮の実態は、あらゆる思惑が交錯する欲望の坩堝と言って過言でない。ヴィヴィアンがこうも危うい魅力を放つ白皙の美少年と知っていれば、近習の打診などしなかっただろう。