獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 緊張感を孕んで静まり返った室内に、俺の靴音だけが響き渡る。大股で緋色の絨毯の上を進み、一段高い台座に設えられた玉座に腰を下ろす。皮張りの座面は、極上のクッション性でふわりと包み込むように体重を受け止めた。豪奢な見た目を裏切らぬ座り心地に、献上した職人の意地とプライドを感じた。
 撓んだマントをバサリと払って裾を捌くと、長い尻尾の先端をその上に落とす。右の肘掛けに肘を突き、僅かに体重を預けて緩く足を組む。そうして玉座にひと心地ついたところで、台座の下で低頭してお声掛かりを待つ少年へと目線を向けた。
 俺の位置からその表情は窺えず、金色の頭頂と細身のシルエットが確認できるのみ。しかし少年には、いるだけでそれと分かる独特な気品と華があった。
「其方が俺の近習として仕えるモンターギュ家の嫡子か。言葉を許す、面をあげよ」
 俺が許しを与えると、少年は臆することなく顔を上げる。
「ヴィヴィアン・モンターギュと申します。陛下の近習として、誠心誠意お仕えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」