獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 獣の血は強さの象徴とされ、古くから「獣の血が薄まること=国力低下」と考えられていた。だから皇帝一族は必死に血を濃く保とうとしてきたが、千年前に獣型の顔面を持つ最後の皇帝が死去。以降は、皇帝一族も虎耳と尻尾が付いた人間の姿になっている。
 現在のヴィットティール帝国民は、高位貴族らを中心に虎耳と尻尾が付いた人間がおよそ一割、残る九割は虎耳と尻尾を持たない普通の人間。その上、一割の人々が有するそれも年々退化し、虎耳はちまっと、尻尾もひょろっと、あるんだかないんだか分からないくらいにすっかり存在感が薄くなってしまっている。
 代々皇帝一族に仕える近習を輩出してきた我がモンターギュ家も例に漏れず、数百年前に虎耳と尻尾を持った最後の当主を亡くして以来、虎耳と尻尾を持つ子は生まれていない。今となっては、虎耳と尻尾の特徴すら風前の灯火となっているのだ。