満面の笑みでその手を取ろうとしたが、手に触れる直前で引っ込められてしまう。
 え!? 驚いて見上げれば、マクシミリアン様は何故か苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「やはり自分で乗れ」
 マクシミリアン様は素っ気なく告げると、プイッと顔を背けてしまう。
「は、はい……」
 車高が少々高かろうが、ひとりで乗ることは容易だ。だけど、示された気遣いに一度は喜びかけたし、なにより手のひらを返したような言動にショックは隠しきれない。
 私はションボリと肩を落とし、サイドバーを支えにして車内へと乗り込んだ。高揚した気分から一転、急に取られた冷たい態度に落ち込んで、心はどんよりと暗い。
 とはいえ、マクシミリアン様の言動はもともと冷徹だったはずなのだ。初見の挨拶や、その後に投げかけられた言葉にも、理不尽で横暴なものはいくつもあった。
 ……なのに、どうして私は今さら一喜一憂しているんだろう?
 こんな疑問が一瞬脳裏を過ぎったが、その訳は私自身よく分からなかった。