「おはようございます!」
「……入れ」
 マクシミリアン様の居室の前で元気に声を張れば、低く入室の許可が返る。
「失礼します! 本日はこれよりガブリエル陛下をお連れして朝市の視察へ向かいます。その後は中央公園を視察し、皇宮に戻りましたら昼餐を挟んで国交正常化に向けた初会談となります。朝食は朝市で取る予定になっておりますので、お着替えだけ済みましたらすぐに出発いたします」
 扉をくぐり、今日のこれからのスケジュールを報告しながらツカツカと室内を奥に進む。マクシミリアン様は既に身支度を済ませ、窓際に立っていた。
 差し込む朝日を受けて立つマクシミリアン様は冴え冴えと美しく、トクンと胸が跳ねる。
「体調はどうだ?」
 一メートルほどにまで距離を詰めたところで、マクシミリアン様が窓から私に目線を移し、謎の台詞を口にする。
「体調、ですか?」
 質問の意味が分からず、コテンと首を傾げる。
「頭痛や胸やけは残っていないか?」
 続く問いかけに、ますます脳内に疑問符が浮かぶ。
「まったくありませんが、急にどうしたんですか?」