俺自身がした想像の異常性に、頭をハンマーで殴られたかのような衝撃に慄く。弾かれたようにヴィヴィアンのシャツから手を離すと、二番目以降のボタンは外さぬまま手巾を押し当てて、鎖骨の上の窪みで結ばれた汗を努めて事務的に拭った。
 拭き終えた俺は一旦彼の元を離れ、汲み置きの水にタオルを浸して戻った。汗で張り付く髪を掻きあげて熱を持つ額に置いてやれば、ヴィヴィアンはふわりと口もとを綻ばせる。
「……ん、気持ちいい」
 薄紅色の唇から呼気と共にこぼされた艶めかしい呟きにゾクリとした。
 段々と呼吸が穏やかになっていく様子を食い入るように眺めながら、否が応にも認めずにはいられない。先ほどは言い当てられた気まずさと驚き、そしてヴィヴィアンを色眼鏡で見られたことが耐えがたく、ガブリエルに声を荒らげてしまった。しかし奴の目はたしかだ。
 以前は脳裏を掠めたこともなかったが、俺はガブリエルの言葉を借りれば『少年趣味』なのかもしれない。俺は世間に顔向けできない性嗜好を持ち合わせていると確信した。己の浅ましい欲望を自覚した今、これまで通りヴィヴィアンを近習に重用していていいのか。