獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 ガブリエルや比較的酒に強い俺でこそガバガバと飲んでいたが、この酒は我が国では火酒と評されるほどアルコール度数の高い酒だ。
 酒を飲み慣れぬ者が多量に含めば、一気に酒が回って卒倒することは十分に考えられる。安易に勧めていい代物ではない。
「大丈夫か!? おいヴィヴィアン!」
 必死の呼びかけに、目を回したヴィヴィアンは答えない。
 しかし、ふやけた顔をして俺の尻尾を握り込んでいるのを見るに、どうやら命に係る深刻な状況ではないようで、その一点には安堵する。
「あちゃー。どんだけ酒に弱いんだよ。まぁ、これもいい経験だな! はははははっ!」
 伸びてしまったヴィヴィアンを覗き込み、のんきに高笑いを浮かべるガブリエルに殺意が湧く。
「笑いごとではない! こんなに強い酒を、年少者に勧める馬鹿があるか!?」
「おいおい、俺がそんなん知るかよ。俺の国じゃガキの頃から水代わりに酒を飲む。この程度なら十歳を超えりゃ誰でも飲んでんだろうが」
「ふざけるな! ここはヴィットティール帝国だ、お前の国の者と一緒にするな!」