獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが！

　同時に、思っていた。もしかすると、周囲の者に対して終始冷徹で厳しい態度を崩さない彼の本質は、もっとずっとまろやかで優しいのかもしれない。
　そんなふうに考えれば、マクシミリアン様の厳しい態度の中には、多くの優しさや気遣いが垣間見えた。近習の勤務初日には「お前は細すぎるからな。残さずに食えよ」と言って、私を食事の席に誘ってくれた。今だって、遅い時間のお酒の席から私を遠ざけようとしてくれたのだ。
　もしかすると、彼の厳しさは己を守るために纏った鎧なのかもしれないと、そんな思いが過ぎる。私は軽口で笑い合うふたりを横目に、胸にこれまで感じたことのないざわつきを覚えていた。
　……鎧を脱ぎ去った本来の彼とは、果たしてどんな人なのだろう？
「おいヴィヴィアン、お前も酒を注ぐばかりではつまらんだろう。俺が許す、一緒に飲め！」
　え!?　すっかり物思いに耽っていた私は、ガブリエル様から突然水を向けられて、咄嗟には反応ができず固まった。