獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「何故だ? それをして、俺にどんな利がある?」
「国交があれば思い立った時に、こうして俺といつだって酒が飲める。どうだ、なかなか悪くないだろう?」
「ハッ! お前は相変わらず調子のいいことしか言わん」
 ガブリエル様は肩をそびやかす真似をしながら、ヤレヤレといった様子でため息をつく。
 そうして、ゆらゆら揺れるマクシミリアン様の尻尾をジッと見つめたかと思えば、突然ペンッと叩く。
 ……おお、ガブリエル様がマクシミリアン様の尻尾にちょっかいを出している!
「おい、尻尾を叩くな」
 不満げにこぼすマクシミリアン様の尻尾は本人の感情をそのまま映し、ブワワッと逆立っていた。
「ハッハッハ! すまんすまん。ずいぶんと揺れているから、つい」
 ちょっと、ワクワクしつつふたりのやり取りを見守る。
 それにしても、私が知るマクシミリアン様は、どう転んでも「調子のいいことしか言わん」などと表される人ではない。初めて目にするマクシミリアン様の姿に、私は驚きが隠せなかった。