獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 ガブリエル様は高らかに笑いながら、マクシミリアン様と私の背中を押して手前の応接スペースに足を向ける。
 私は途中、抱えていたマントを汚さないように手近な棚の上に置いた。
「……待て。今日は星が美しい、テラスで飲もう」
 マクシミリアン様は諦めたようにチェストから酒瓶と杯を掴むと、顎先で居室の奥に続くテラスを示す。
「おぉっ! 星見酒たぁ、おつじゃねえか!」
 ガブリエル様は嬉々として、行き先をテラスに変えた。

 満天の星々の下、ふたりは既に何杯目とも分からぬ杯をあおる。
 ふふふっ。私はピクン、ピクンと時折跳ねながら揺れるマクシミリアン様の尻尾を横目に見て、ひとり口元を緩ませた。
 これは初めて知ったことなのだが、お酒が入るとマクシミリアン様の尻尾は、普段よりもよく動く。
 どうやらそれは本人の意思によるものではなく、無意識に動いているらしく、反射的に跳ねるようにピクンピクンと揺れるのだ。
 モコフワの尻尾が動いているのはそれだけで物凄く魅力的で、私はお酌の合間にチラチラと眺めて楽しんでいた。