獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 ガブリエル様はマクシミリアン様の言葉を笑い飛ばして自論を展開した。その中で特に強調されたのは女性の趣味の部分だ。
 ……何故「酌をしろ」の要求から一気に「遊び女」へと話が飛躍しているのかはあえて聞くまい。私だって「英雄色を好む」という、名(謎)言はちゃんと知っている。
 とにもかくにも、ガブリエル様がかなり面白い方だというのは分かった。さらにふたりのやり取りからは、単なる既知という以上の親密さが見て取れた。
「では、僭越ながら僕がお酌を務めさせていただきます!」
「おい!? ヴィヴィアン!」
「だってマクシミリアン様、早朝や深夜でも近習が主に同席するのは普通のことですよね。なんらおかしいことではありません」
 私の言葉にマクシミリアン様は驚いたように目を見張り、唇を引き結んだ。
「はははっ、坊主は見た目に違わずしっかりしている! これではどちらが主人か分らんな! マクシミリアン、今回はお前の負けだ。さっそく『とっときの酒』とやらで再会の祝宴といこうじゃねえか!」
「わっ!?」
「おい……!?」