獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「ヴィヴィアンと申します」
 一国の王様と考えれば気さくすぎる態度に困惑しつつ、礼を欠かぬよう優美に腰を折って名前を名乗った。
「そうか。ではヴィヴィアン、お前が酌をしろ」
「え……!? お酌、でございますか?」
 続きに告げられた要求に、ますます戸惑いが募る。
 するとマクシミリアン様が、ガブリエル様の目から私を隠そうとでもいうように間に割って入った。
「やめろガブリエル、ヴィヴィアンは酌婦ではない」
 マクシミリアン様は厳しい口調でガブリエル様に対する不満を露わにした。そうして私にチラリと目線を寄越すと早口にこう告げた。
「お前はもういい。自室に戻って休め」
「おいおいマクシミリアン、なにをそうムキになる? いくらそこの坊主が美丈夫だからと、俺とて最低限の分別は弁えているぞ。今日の酒盛りで女の接待は求めちゃいないし、ましてや坊主に遊び女の真似事をさせようなど思ってもいない。単に、手酌は好まんというだけだ。なにより俺の趣味は、豊満で乳のでかい女だ! いくら美人でも、鳥ガラには食指が動かん!」