獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが！

　しかし今は、旧友との久方ぶりの再会に純粋な嬉しさが先に立つ。きっとガブリエルも思いは同じだろう。
　実際、俺を映す彼の瞳に険はなく、かつて共に諸国を巡っていた時のように穏やかな光を湛えていた。

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　今日の午後ガブリエル陛下を皇宮にお迎えし、表面上の華やかさとは対照的に裏方は息つく間もない大忙し。上に下への大騒ぎになっていた。
　マクシミリアン様の身の回りをお世話する私も例に漏れず、衣裳や装身具の管理などで多忙を極めた。今も衣装部屋から持ってきたマントを手に、足早にマクシミリアン様の居室に向かっていた。歓迎式典や視察などシーンごとの衣装を誂えるのは衣装係だが、予定に応じてそれらを居室に揃えるのは近習である私の仕事なのだ。
　ちなみにこの時間、マクシミリアン様は晩餐会に参加していて部屋にはいない。しかし近習は、身の回りの手入れのために入室が許されていた。
　私は主不在の室内に入ると、真っ直ぐに明日の衣裳が準備されている奥のクローゼットに向かう。衣桁に掛かったマントを見て、ひとり納得して頷く。