獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが！

「ふふふっ、あなたって昔から運がよくて、そしてとっても頑固な人。でもいいわ、あなたは病気療養の間に時間だけはたっぷりあるんだもの。ゆっくりと考えて、あなたなりの結論を出したらいいわ」
　奥様は力なく丸まったシルバさんの背中をトンッと抱き締めて微笑んだ。
　この後、私は奥様が入れてくれたお茶と手製のラズベリーパイをご馳走になり、手土産と見舞いを兼ねて持ってきたハーブスプレーを手渡した。
　奥様はハーブスプレーを大層喜んでくれて、詳しく尋ねてきた。
「これを掛けてから、普段通りにブラシをあてればいいの？　マッサージっていうのは、具体的にどんなふうに行うの？」
「もしよかったら、奥様の尻尾をマッサージさせていただきましょうか？」
「是非やっていただきたいわ！　こちらのソファでお願いしてもいいかしら」
　私の提案に奥様は大喜びで、ソファに移動した。シルバさんも興味津々の様子で後ろから付いてきた。
　そうして私がマッサージを始めた瞬間、奥様はとろんと蕩けた目をさせて気持ち良さそうに尻尾を揺らした。