獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「聞かせていただいたわ、そもそもの発端は迂闊な主人たちじゃないの。自業自得なのだから、あなたが気に病む必要はないわ。それからね、主人たちの議会欠席によって『身分を超えた婚姻を認めない』との条文削除が決定したでしょう。実を言うとね、これによって私たちの息子が救わているのよ。……いえ、もしかすると本当の意味で救われたのは、息子ではなくこの人なのかもしれないわね。ねぇ、あなた?」
 私は奥様の言葉に首を捻った。
 奥様から水を向けられたシルバさんを見ると、眉尻を下げ困ったような、都合が悪いような、なんとも表現し難い顔をしていた。
「息子がね、以前から屋敷の下働きの娘と親しげにしているのはうすうす気づいていたの。その娘が子を宿したと、四日前の夜に息子から聞かされたわ」
 四日前と言うと、私が政務エリアでふたりの会話を聞いた日だ。