獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが！

「はははっ！　なんとなんと、これはすっかりヴィヴィアン殿にお灸を据えられてしまいましたな」
　厳しい叱責を覚悟して身構える私の頭上で、シルバさんの高らかな笑い声が響く。驚いて見上げれば、白い歯をこぼすシルバさんと目線が合った。
「怒っていないのですか？」
　シルバさんの反応があまりにも予想外で、思わず問いかける。
「そもそもこれは儂らの身から出た錆、あなたに怒る筋合いはない。政務エリアの回廊という往来の場でゴルドと踏み込んだ会話をしたのは明らかに不適切で、儂らの落ち度だ。さすがにゴルドがあの場で陛下のお耳について言及しようとは思わなかったが、それも儂の想像力が足りなかったこと。儂にもゴルドにも、いい薬となった」
　地方創生大臣にはいい薬というよりも、かなり苦い薬になっただろうが……。
　もろもろの動揺が隠し切れず瞬きを繰り返していたら、奥様に横からポンッと肩を叩かれた。