獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

 本当は気が遠くなりそうだったが、気力を寄せ集めてなんとか平静を装う。
 一瞬、正直に打ち明けようかとも考えた。だけど、万が一にもサリーに咎め立てがあってはならないと思い直した。
 結局、私は当たり障りのない質問をした。
「地方創生大臣は外耳道炎に発展して症状が重篤で、虎耳の除去手術になったそうだ。財務大臣と識者は抗生剤の投与で快方に向かっているらしい」
 よ、よかったぁ!! ……いや。決してよくはないのだが、聞かされた財務大臣と識者の無事に、ひとまず安堵に胸を撫で下ろした。
 折を見て、ふたりのお見舞いに行ってみよう。
「そうでしたか。早く回復されるといいですね」
「あぁ。かなり不可解な決着ではあったが、これで我が国の婚姻事情も国際社会に一歩近づいたと言える。アンジュバーン王国との国交正常化交渉にも間に合った。大臣らの手前声を大にしては言えんが、いい結果になった」
「はい!」
 マクシミリアン様の「いい結果になった」という結びの言葉に、私も自分を「これでよかったのだ」と納得させた。