獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!

「……ああ、ご苦労。俺はこのまま少し休む。お前はもう下がれ」
 フワッとボリュームを二倍に増して艶々になった尻尾をそっとソファに置き終了を告げれば、マクシミリアン様は緩慢にソファに突っ伏して、荒い呼吸を繰り返しながら言った。
「は、はい。では、おやすみなさいませ」
 リラックス効果のあるマッサージを施した後なのにどうして息が荒いのか若干怪訝に思いつつ、ボリューム満点になって一層風格を増した尻尾が揺れる様子に満足し、促されるまま退出した。
 その日の晩は、マクシミリアン様の尻尾の感触がずっと手に残っていて、歓喜と興奮が治まらず一睡もできなかった。
 しかし、眠れないことを辛いとは微塵も感じなかった。
 ……また、マッサージさせていただく機会が巡ってきますように。
 極上のモフモフ質感を思い出しながら、そして次回への期待を抱きながら過ごす夜は、私にとって最高に幸福な一夜となった。


 それから三日が経った。
 夕方、議会から戻ってきたマクシミリアン様の表情は明るかった。
「おかえりなさいませ」