ぴしゃりと話題を切った彼は、触れられたくないようだ。

 やっぱり、甘噛みが求愛行動だったなんて嘘だな。覚えていないらしいし、こんなにもそっけないもの。


「いえ、そうではなくて。ベルナルド様は獣人だったのですか?」


 隣に控えていたレンテオさんが興味深い顔でこちらのやりとりを眺めた。

 陛下は、悠々と長い足を組む。


「あぁ。ルビ草の酒で半分姿が戻っていたらしいな」

「やっぱりそうなんですね。ずっと人間だとばかり思い込んでいました。もしかして、獣の姿にもなれるんですか?」

「それはお前もよく知っているだろう」


 ぴょこんと耳と尻尾が現れた。自由自在に姿を変えられる様子に感動していると、はたと気づく。

 昨夜は混乱してじっくり観察できなかったが、白く立派な耳とモフモフの尻尾は覚えがある。それに、黒のチョーカーも黄金の瞳も記憶と重なった。

 まさか。

 予感が確信に変わったのは、陛下のセリフだ。


「ラヴィスは頭を撫でても抱きついてもじっとしているおりこうさん……だったか?」