どうすればいいの?
至近距離で目が合う。この世の誰よりも綺麗な獣が、欲をあらわにして獲物をとらえていた。
心臓が早鐘を打ち、うるさくて仕方がない。はやく押しのけなければいけないのに、普段は感情を悟らせない彼がありったけの思いを私だけにぶつけている状況に心が震えた。
だめだ、食べられる。
唇が触れ合いそうになった瞬間、視界に入ったのはテーブルの上の花瓶だ。
「ご、ごめんなさい!」
必死で手を伸ばして勢いよく花瓶を逆さにすると、むせかえる花の香りと冷たい水が陛下の頭に降り注いだ。
ぴくんと彼の肩が跳ね、お互いびしょ濡れで硬直する。
乱れた銀色の髪から、頬に雫が滴った。
「エスターちゃん!?すごい声がしたけど……」
待って、今は!
駆け込んできたレンテオさんが目を見開くと同時に、ベルナルド様は力尽きて私の上に倒れ込む。
とんでもない現場を目撃された私は、気まずそうに視線を逸らす騎士団長に言葉が出ない。


