悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 初老の男性が緊迫した声を上げた。まずい、気づかれた。逃げようとしたときにはすでに遅く、若いほうの男性に腕を掴まれる。

 皮膚に食い込むほどの力に、痛みで顔がゆがむ。


「誰かと思えば、噂の婚約者ではないか。今の話を聞いていたな?」


 初老の男性に詰め寄られ、身の毛がよだつ。後手に拘束されて動けない。


「客人を罠にはめて手にかけるなんて、恥を知りなさい。ベルナルド様に罪を被せるのを見過ごせないわ。あなたたちのほうが、よっぽど悪役よ」

「よく吠える強気な女だ。自分の状況がわからないのか」


 背後から喉元に短剣を当てられた。二人組のうちの若い男性が、拘束しながら剣を抜いたようだ。

 殺される。

 そう悟った瞬間、目の前の初老の男性が何者かに首根っこを掴まれた。驚きのあまり呼吸を忘れると同時に、男性は強く蹴り飛ばされて廊下の壁に叩きつけられる。

 低いうめき声とともにずるずると地面に沈んだ彼の背後から現れたのは、氷の眼差しをしたベルナルド様であった。

 私をとらえる若い男性も「ひっ」と悲鳴をあげる。


「俺の獲物に気安く触れるな」