古城のあるエピナント国の国境からモンペリエ国の舞踏会場までは馬車で片道二時間ほどであった。
案内されたのは国立の歌劇場であり、オレンジの光が灯されたシャンデリアがいたるところで輝きを放っている。
磨き抜かれた壁や床は歴史があり、古くから舞踏会場として使われているようだ。
ホストへ挨拶をしたあと、ベルナルド様が軽くひじを曲げた。その合図でぎこちなく腕を組むと、ホールに足を踏み入れた瞬間、周囲の視線が一気に集まる。
「ひっ、エピナント国の陛下だ……!社交場に姿を見せるなんて、いつぶりだろう」
「隣の麗しい女性はどなた?貴族の娘ではないわよね」
辺りの空気が、急に冷え切って緊張に包まれた。好奇の目というより、畏怖の対象だ。近づく者はいないけれど、遠巻きにじろじろ注目される。
居心地が悪いな。ベルナルド様が現れるとこんなにも和やかな雰囲気が消えるんだ。
その原因は、冷酷な獣の噂以上に、彼の常人離れした美しさにあった。にこりともしない冷たい瞳が動くたびに人々は怯えている。



