絶句していると、陛下は冷たい表情で口を開く。
「近寄るな。お前も血でけがれる」
なにが起こったのかは知らない。でも、人を斬り、平然としていられる彼が理解できなかった。陛下は命を奪う行為を平気でするのだ。
「あなたに、ヒトの心はないのですか」
無意識に声が震えていた。
その瞬間、周囲に集まっていた使用人たちが息を呑み、陛下の眼光が鋭く変わる。
「今、なんと言った」
「誰かを殺したのでしょう?どうしてそんな酷いことができるのですか」
「子兎になにがわかる」
ぐっと喉に片手をあてがわれた。周囲で「ひっ」と声を上げた者もいる。
細い首に骨張った指が食い込んだ。締めるのではなく脅しているのか、苦しくはない。
「あなたは優しいと、信じていたのに」
本音をこぼすが、殺されはしなかった。
指はすぐに離れ、足から力が抜けて廊下に座り込む。
「俺に甘い幻想を抱くな。貴様に理解されようとも思わない」
突き放すセリフが心臓を貫いた。赤黒い血に染まったマントをひるがえし、城の奥へ消えていく。
すぐに使用人たちが駆け寄って、体を起こしてくれた。
「陛下に反論するなんて、命知らずだよ」
「下手に怒らせないほうがいい。殺されてしまう」



