気分を害したのかと身構えるが、殺気はまるで感じなかった。
本当に不思議な人。なにを考えているのかまったく読めない。
「あの」
声をかけると、目線だけこちらに向けられた。上目遣いでとらえられる。
「薬は、頑張って作ります。城からも逃げ出しません。なので、また、庭でラヴィスとお話ししてもいいでしょうか?」
やっと出会えた安息の地だ。できれば、また会いたい。
「獣が許せば、好きにしろ」
そう答えて立ち上がった彼は、振り向きもせずに扉へ向かう。
もう、話は終わり?とりあえず、怒られなくてよかった。
そのとき、ふと脳裏に薄い毛布かかけられていた記憶がよぎる。あそこは使用人が立ち入らない陛下のプライベートな庭だ。
「ベルナルド様。その、私に毛布をかけてくださいましたか……?」
立ち止まり、綺麗な横顔がこちらを向いた。わずかにまつ毛を伏せた彼は小さく息を吐き、再び前を向いて歩きだす。
「二度と庭で寝るな」
去り際に残された言葉は、どこか優しい響きだった。



