悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 低い声に鳥肌が立つ。ベルナルド陛下だ。

 どうして?謁見の間で殺されかけた後は、会話を交わすどころか、顔を合わせる日すらなかったのに。

 緊張と恐怖で震える足を引きずって、扉を開けた。頭ひとつ分高い位置から、無表情の黄金の瞳がこちらを見下ろしている。


「な、なんのご用でしょうか」


 陛下は無言で部屋に入り、ソファへと腰かけた。優雅な所作は隙がなく、目を奪われる。


「扉を閉めろ」


 意図が読めずに困惑したが、おとなしく従った。静まり返る部屋はふたりきりの空間だ。気まずいこと、この上ない。


「あの、薬ならまだ出来ていなくて……約束の日までは待っていただきたいです」

「その話ではない」


 首を傾げると、陛下は低く続ける。


「お前は、あの獣が怖くないのか」


 昼間の出来事が頭をよぎる。もしかして、ラヴィスと昼寝していたのを見られていた?


「申し訳ございません。プライベートなお庭に勝手に入った上に、あんな……」

「謝罪を求めているわけではない。なぜ、あの獣に触れた?」