悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました



 感情が凍てついていた心に、初めて血が通う。温かくて幸せな気持ちが胸にあふれて涙がこぼれた。

 獣たちを率いるベルナルド様に抱かれて、ブルトーワ国の地を後にする。

 やがて連れてこられたのは見慣れた古城だ。

 特別任務を終えて王都へ帰っていく騎士団に感謝の声をかけたベルナルド様は、すぐに北の塔の自室へと私を運ぶ。

 やっと体が降ろされた先は深紅のソファだった。

 気まずい。なんて声をかければいいの?

 お互い見つめ合ったまま、ふたりきりの部屋に沈黙が流れる。


「あ、の……私……」


 謝らなければならないことがたくさんある。

 彼の愛を裏切って、他の人の妻になろうとしたこと。相談もなしに古城を出たこと。ひとりですべてを背負おうとして結局迷惑をかけたこと。

 しかし、ごめんなさいと声が出る前に口を開いたのは向こうだった。


「エスター。この部屋での最後の会話を覚えているか」


 最後の会話?

 目の前にかがんだ彼が、ゆっくりと手を広げる。戦が始まる前、この部屋で交わした会話が頭の中に流れ込んだ。


『戦が終わり故郷から帰ったら、俺の腕の中に来い』