命令に、衛兵たちがはっとして槍を構えた。ゲストは危険から身を守るため、一斉に外へと逃げていく。騒然とするチャペルは結婚式どころではない。
そのとき、人混みに紛れてマント姿の人物が私めがけて駆けてきた。
その手には鋭いナイフが握られている。
「きゃあっ」
悲鳴をあげると、殺意を込めた刃が一直線に襲いかかった。グレイソンは隣で震え、恐怖のあまり逃げだそうとする。
しかし、間にベルナルド様が入り、素早くナイフを剣で弾いた。マントのフードに隠れていたのはカティアだ。
嫉妬に駆られて起こした事件で家も金も婚約者も失った彼女は、恨み募って私を殺すためにゲストに紛れていたらしい。
カティアは剣に弾かれた衝撃で、近くの衛兵の元へと吹っ飛ぶ。
命の危険にさらされた恐怖でうまく息が出来ずにいると、半分獣化したベルナルド様が怒りをあらわにして尻尾を逆立てた。
怒号の行き先はグレイソンである。
「どうして今エスターを守らなかった!一歩遅ければ自分の妻が死んでいたんだぞ」
「じ、獣人でもないのに、俺に勝ち目があるわけがないでしょう」
「種族なんて関係ない。お前のような男にエスターを奪われてたまるか」
ふわりと体が浮いた。軽々と私を横抱きにした獣の陛下は、神聖なチャペルで高らかに言い放つ。
「こいつは俺の愛する女だ。誰にも渡さない」



