「古城で暮らした間のことは婚約者として仕方なく演技をしただけで、全て本気ではありません」
「嘘を並べても無駄だ。お前が気にかけているのはコレだろう?」
胸元のポケットから取り出されたのは小瓶だ。中には透明の液体が入っている。それは紛れもなくドミニコラさんと作り上げた薬だった。
なぜ持っているの?まさか、まだ病が治っていない?
衝撃の事実に目を見開いた途端、彼は勢いよく小瓶を床に投げつける。パリン!と乾いた音が響き、薬がこぼれて飛び散った。
頭が真っ白になり、つい抑えていた感情があふれでる。
「なんてことを!死んでしまったらどうするんですか」
「お前と共に在れない生など、なんの価値もない!」
力強い声が胸を打つ。
契約を破棄するためにここへ来てくれたの?先に死ぬのを覚悟して、あえて私の自由を奪わないでいてくれたのに。
悪役のまま、何度も好きにさせるのね。
「お前をさらいに来た。帰るぞ、エスター」
手を差し伸べられた瞬間、グレイソンが叫ぶ。
「そ、そんな身勝手なことはさせない!早くこの者を外へ連れ出すのだ」



