悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました



 机の上のレドウ草に視線を落とすと、涙があふれそうになった。

 ここで泣いてはいけない。全て私が選んだ道だ。


「地元の男性と結婚することになったんです。古城にも戻れなくなります」

「まさか、そんな。君は主と愛し合っているはずじゃ……」


 そこまで言いかけて赤い瞳がはっとする。察しのいい彼は、レドウ草を見つめていた。


「君は、未来を代償にしたのかい?」


 無言がなによりの肯定だ。別れ際に、気丈な笑みで小瓶を手渡す。


「ベルナルド様をよろしくお願いします」


 それからの記憶はあいまいである。放心状態で馬車に乗り、ブルトーワ国へと帰った。

 世界は一気に灰色と化して、過去の自分に立ち返ったように笑顔もない。町の人たちはグレイソンとの結婚を聞きつけたらしく、刺々しい視線を送られた。

 財産目当てだと言われたところで、痛くも痒くもないわ。

 愛さなくてもよいと言われてあったのを盾にして、グレイソンの屋敷では部屋に閉じこもり、食事だけメイドに運んでもらう生活である。