おずおずと体を起こすと、私を置いて歩きだす彼の低い声が響く。
「この城の庭に薬室がある。五日以内に“ルカロ草”の解毒薬を調合しろ。植物園以外の出入りは認めない。……逃げ出したら、匂いを追って噛み殺す」
重い扉が閉まり、背中が消えた。まだ恐怖で指が震えている。
許された猶予は五日間。もともと、殺人の容疑で殺されるかもしれなかったのだ。町の牢に比べたら、待遇は良いだろう。
薬師としての実力が認められれば、見逃してもらえるかもしれない。
あきらめない。私は、ひとりで生きていくと決めたのだから。
力の抜けた足を無理やり立たせ、深呼吸をした。両手で頬を軽く叩き、気合を入れる。
謁見の間を出ると、ここまで案内をしてくれた騎士が控えていた。その手には小さな鍵がある。
彼に連れられて歩くと、城の庭に出た。ベルナルド陛下の言った通り、広い芝生を抜けた先に植物園が建っている。
透明な壁で覆われたそこは温室になっていて、グレイソンの植物園よりは小さいものの、希少な薬草が所狭しと植えられていた。


