悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました



 気づいたら頬に涙がつたっていた。

 驚く黄金の瞳が視界に映り、急いでごまかす。


「ごめんなさい、嬉しくて。変ですよね。とまらない」


 優しい腕に抱き寄せられた。

 温かくて安心する居場所だ。ずっとこのまま一緒にいたい。

 胸板に寄り添うと、服越しに命の鼓動が聞こえる。夢のような願いと相反した感情が同時に込み上げた。

 生きてください。私を忘れて、幸せになって。

 口に出す勇気もないのに、ネックレスを突き返せるわけがない。

 そのとき、まぶたに気づかうような柔らかい唇が触れた。びっくりして体が震える。


「とまったか?」

「は、い」


 ぎこちなく返事をすると至近距離で目が合い、獲物を目の前にした獣のように、彼の瞳に熱が宿った。

 唇へのキスの予感が体を駆けめぐる。甘い思考に支配され、周りの音が聞こえない。

 しかし、わずかにまつげを伏せた彼はあえて唇を外し、喉へ口づけを落とす。


「今日はもう遅い。部屋に戻って休め」


 はっと現実に引き戻された。

 私はなにをしているの。別れる未来を選んでおいて、甘えてはだめなのに。食べられてもいいと思うほどに期待してしまった。


「ネックレス、ありがとうございます。おやすみなさい」

「あぁ」