悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました

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「聞いたか?モンペリエ国との開戦は一週間後らしいぞ」


 古城に戻ると、若い騎士たちが噂をしていた。

 エルフの彼らは国の防衛部隊に配属され、王都の獣人騎士団はモンペリエ国の侵攻を前線で迎え撃つらしい。

 故郷であるブルトーワ国とモンペリエ国のちょうど国境付近に位置する古城は、騎士団の陣営となるようだ。すでに城内には緊張感が漂っている。

 開戦は、私がグレイソンの植物園に行く約束の日と重なっているのね。ベルナルド様の見送りも出来そうにない。


「おかえり、エスターさん。帰りが遅いから心配したよ」


 ドミニコラさんに出迎えられてドキリとした。私が交わしてきた契約は、彼の力を借りてこそ意味がある。


「すみません。市場をまわりすぎてしまって……あの、戦が始まったら、ドミニコラさんはベルナルド様とともに戦地へ向かうのですか?」

「いや、怪我人の手当ては王都の医師が就くよ。僕は古城に残って治療薬の研究さ」


 ひそかに胸をなでおろす。私ひとりで薬を完成できなくても、彼と一緒ならレドウ草をうまく利用できるはずだ。