そこまで考えて、頭がパンクしそうになった。なんとも恐れ多い。首を甘噛みをされたのが夢だとすら思える。

 求愛って、どのレベルの気持ちなんだろう。獲物を食べたいという欲求とは別なのよね?獣人はわからないことだらけ。

 つい、仕事から恋愛脳へと変わりはじめたそのとき、近くから声をかけられる。


「エスター?エスターじゃないか!」


 声をかけてきた男性を見た瞬間に過去の記憶が頭に流れ込んだ。

 クセのある茶髪に高貴な服を着こなした背の高い彼は、忘れもしない故郷の植物園を経営する地主の息子だ。


「グレイソン、どうしてここにいるの?」

「もちろん仕事さ。父から経営を受け継いだんだ。今じゃ、俺が植物園のオーナーだよ」


 温室の管理もまともに出来ずに草を枯らしていたあなたが、オーナーですって?

 言葉は飲み込んだが、とうてい理解が出来なかった。

 かつて、植物園の環境は私が責任を持って整えていた。

 次期経営者となるグレイソンもたまに父の指導を受けながら仕事をしていたが、暇があれば口説いたりサボったりして、それはもう迷惑だった記憶がある。