安心感が込み上げたが、見るに耐えない不均等な髪型と首の傷から流れる血を認識するなり、彼の顔が一変した。
燃えたぎる怒りを宿した瞳は震え上がるほど怖い。
「命を無駄にするなと言っただろ!」
衝撃が体に走った。
初めて本気で怒鳴られた。
警戒とも威嚇とも違う、感情をありのままぶつける声が心に突き刺さる。
『俺はお前を危険にさらすために手放したわけではない。これからは厄介ごとに首を突っ込むんじゃないぞ』
頭をよぎったのは、かつての忠告だ。
私のためを思って言ってくれたのに、また迷惑をかけてしまった。助けるつもりだったのに、なにも出来ずに叱られていたら世話がない。
「なぜここに来た。お前ひとりでどうにかするつもりだったのか」
「ベルナルド様に死んでほしくなかったんです」
「だからと言って、単身で乗り込む奴がいるか!お前はもう、俺の婚約者でもなんでもないだろう!」



