言葉を選びながら平静を装って尋ねると、彼女は答えた。
「私も噂くらいしか聞いていないけど、空調に使うらしいわ」
「空調?」
「そう。ルビ草のエキスを霧にして、応接室の空調に混ぜるの。はじめは鼻が効く獣人に気づかれない微量でね。彼らの嗅覚が鈍ってきたら、濃度を強めて酔わせるんだって」
つまり、ベルナルド様達は呼吸をするだけで気づかないうちに体の自由を奪われるということ?
恐ろしい計画にぞっとした。
たしかに、舞踏会ではノンアルコールのドリンクだとだまして勧められて、みんな酔っ払ってしまった。
警戒心が強くなった彼らは、この国で食事をとらないはずだ。
それを逆手にとって油断させ、空調を悪用するとは許せない。
メイド服を調達して自由に動けるようになった私は、メイドキャップをまぶかにかぶりながら本館へと向かった。
渡り廊下は疑われもせず通ることに成功し、廊下の陰から様子を伺うと、化粧室の前には相変わらず役人が立っている。
良かった。まだ私が抜け出したのは気づいていないようね。



