悪役エンジン全開で告げると、役人は焦って走って行った。残されたほうの男性にさらなる仕掛けを試みる。
「ねぇ、化粧室はどこ?ラヴィスに会う前に身なりを整えたいわ」
ドレスコードに合わせた着替えを持っていると見せかけてハッタリをかました。
役人は、自由に動かれるよりひとつの部屋にとどめた方がいいと判断したのだろう。マントで体が隠れているせいか、実は荷物を持っていないということを疑われずに案内される。
監視を続ける男性を、扉の前で制止した。
「まさか、中まで入ってくるの?着替えをのぞくつもり?」
「い、いえ。失礼しました」
やっと撒けたものの、扉の前にピッタリくっついているはずの役人の目をかいくぐって廊下に出るのは至難の業である。
音を立てないように窓から中庭へと抜け出した。
中庭は迎賓館の別棟と繋がっており、メイドが忙しそうに出入りしている。どうやら、使用人たちの控え室として使われているようだ。



