正装など一切ないマント姿で玄関へ向かった。案の定、受付を任されていた警備員らしきふたり組の役人に止められる。
「こら、待ちなさい。ここは一般人の立ち入りは禁止だ」
「一般人?失礼ね、なにをおっしゃっているの。私はラヴィス=ベルナルドの婚約者よ」
フードを脱ぎ、顔をさらした。予想外の訪問者にどよめく彼らはうろたえている。
「まさか!今日のゲストはもう通したはずだ」
「いや、この美貌……!舞踏会に参加していた傾国の美女に間違いない」
ここまで来たら勢いで押し通すしかない。王をたぶらかす、わがままで非常識な悪女を演じて、たたみかけるようにツンとした態度でにらむ。
「ラヴィスはここにいるんでしょう?私を連れていくと言ったのに、さっさと部下だけをおともに出て行ったものだから、追いかけてきたの。通してくださる?」
「い、いや、それは。勝手にご案内するわけにもいきませんし、上の者に確認をしてもよろしいですか」
「私を待たせないで。さっさとして」



