悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました

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「いいか、くれぐれも慎重にな。この会社の話は一切口にするな。失敗すれば命はないぞ」


 髭面の男性にきつく詰め寄られる。

 いつでも尻尾が切れる末端の新人を運び屋につかうのは、自分の保身のためだ。手下が捕まっても、無関係を装うつもりなのだろう。

 私が今から裏切るとは知らずに。

 あなたに命を握られたって怖くないわ。私はいつだって、自分の守りたいもののために身体を張るの。

 冤罪だとはいえ、死ぬはずだった人生を救ってくれた大切な人たちを傷つけやしない。

 馬車の荷台には大きい箱が乗せられた。中身はすべてルビ草だ。

 話にあったとおり、モンペリエ国の関所では全く足止めされなかった。

 町で雇ったなにも事情を知らない御者の男性は、知らず知らずのうちに犯罪に巻き込まれていると気づかないまま手綱を握っている。

 私が失敗すれば、この人にも迷惑をかけてしまうわ。絶対に暗殺計画を阻止しなきゃ。

 数時間後、到着した場所は迎賓館(げいひんかん)であった。

 国の要人として招かれているのならば当然だが、きらびやかな玄関と金箔で彩られた美しい天井にはほれぼれする。

 とても綺麗な場所ね。まるで宮殿みたい。