悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました


 ふと、違和感を感じて尋ねる。


「あの、ルビ草を葉の状態で輸出入するのは禁じられているはずですよね?寄生虫を媒介する恐れがありますし、お酒に加工しても厳正な審査が必要なので、関所の許可がおりているのは不自然です」


 次の瞬間、男性の表情が一変した。愛想笑いのカケラもない冷たい顔は殺気すら感じる。


「許可なんてはじめから必要ないんだよ。これはモンペリエ国の幹部から直々に依頼された闇ルートなんだから。お前は黙って運べばいい」


 闇ルートだって?

 耳を疑ったそのとき、デスクの職員たちが口々に続ける。


「結局、ボテン草を採ってきても裏取引をさせるつもりだったんじゃないっすか。やっぱり悪いお人だ」

「まぁ、権力の後ろ盾がある以上に、こんな小さな会社がモンペリエ国と繋がっていて、騎士団と獣の王を殺す計画に加担しているだなんて疑われもしないでしょう」


 指先が冷たくなって、足の感覚が消えた。

 ルビ草の効き目は舞踏会で目にしている。あの事件の首謀者が仕組んだ罠だと思い込んでいたが、これは国家ぐるみの陰謀だ。