想いも伝えられずに散った恋は、経験したことのないほど重く苦しいものだった。喉が熱くなり、彼のいない世界で生きる価値があるとは思えなくなる。
それでも、残された時を懸命に生きるあの人の前で命を軽々しく扱うのは裏切りだ。
せめて彼のために、私もなにかできればいいのに。
深呼吸をして、職場の建物へと向かう。髭面の男性にカゴを見せると、驚きを隠せないようだった。
「まさか、本当に持ってくるとはな。なかなか見込みがある」
「これで雇っていただけるんですよね?」
「もちろんだ。俺は君を信じていたよ。もう仕事を準場してある」
なんとなく裏のある笑みを浮かべた男性は、目の前のテーブルに大きな箱を置いた。中にはぎっしりと小分けにされた葉っぱが入っている。
その色と形には見覚えがあった。
「これはルビ草ですか?」
「あぁ。君はこの荷物をモンペリエ国まで届けるんだ。関所にはすでに話を通してあるから、三日後の出発に合わせて馬車を用意してやろう」



