その瞬間、ふわりと体が浮いた。軽々と横抱きにされて驚きのあまり息が止まる。視界には立派なケモ耳と尻尾が映った。
「俺につかまれ」
返事の代わりに首へ腕を回すと、彼は助走をつけて力強く地面を蹴った。重力をもろともしない獣人の脚力は、とうてい届かないと思っていた草原へと華麗に舞い降りる。
本当に飛び越えてしまうなんて。背中に羽が生えたように気持ちよかった。まだ心臓がドキドキしてる。
「すごいです!ベルナルド様、ありがとうございます」
感動に包まれていると、優雅な所作で下ろされた。
「さっさとおつかいを済ませろ」
草原に腰を下ろしてあくびをした彼は、あぐらをかいて頬杖をついている。
少し眠そう。一晩中、ノラが襲ってこないように守ってくれていたのかな。
不器用な優しさに触れて、胸がきゅんと鳴った。
それから、帰りも同じように抱きかかえられて谷を飛び越え、昼前には町にたどり着けた。カゴには満杯にボテン草が詰まっており、課題もクリアだ。
結局送り届けてくれた彼に、深々と頭を下げる。



